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犬にとってジビエ(シカ肉やイノシシ肉など)は食べても大丈夫?特徴や危険性を解説

Instagramで手作り犬ごはんのレシピや犬の健康に関する情報を発信しているリーリャ編集部(@lilya_foods)と申します。手作り犬ごはんの基本については手作り犬ごはんの作り方・レシピや注意点(量や食材、味付けなど)を解説で詳しく説明しています。 今回は、犬がシカ肉やイノシシ肉などのジビエを食べても良いのか、特徴や注意点を解説します。

海外メーカーのドッグフードを見ていると、あまり馴染みのない原材料を使っていると思ったことはないでしょうか。私たち人間の食事では、お店に行かないと食べることはないであろう、シカやイノシシといったいわゆるジビエが使われている商品を多く見かけます。「お店で食べたことはあるけど犬にとってはどういう影響があるのか?」「高タンパク・低脂質って聞くけどどう違うの?」「ジビエって何の肉を指すの?」「そもそもジビエって犬が食べても大丈夫?」などの疑問をまとめてみました。

ジビエとはそもそも何なのか?

ジビエとは狩猟によって得た野生動物の食肉を意味するフランス語のことで、日本語では野生鳥獣肉と訳されます。供給が不安定なことなどで高価になる傾向があります。とある小説でも、上流階級のゲームとしてハンティングをして、その晩の食卓に出てくる描写もあるように高級食材としても扱われてきました。ジビエの種類としてはシカ・イノシシが代表的ですが、野ウサギ・クマ・キジ・シギなども含まれます。

日本におけるジビエ

日本でもジビエ料理専門店があったり、人間用に提供する飲食店も少なくありません。スーパーなどで見かけることはほとんどありませんが、主にインターネット通販では手に入れることが可能です。特に近年は、昔から生息しているシカやイノシシが急速に増えてしまい、農作物を荒らしたり植物の生態系への被害が拡大してしまっています。令和3年度では、野生動物による農作物被害額は約155億円にのぼり、約7割がシカ・イノシシ・サルとされています。こういった被害を食い止めることと、捕獲した野生動物をジビエ等として流通させることで地域の所得に変えるような動きが活発になっています。

犬の食事においてシカ肉やイノシシ肉の利点と注意点とは?

ジビエ肉を使用したペットフードでは、シカ肉を使用したものが多い印象です。ドライフードの原料としてもシカがタンパク源となっているものをよく見かけます。インターネットでは、手作りごはんの材料として冷凍状態で販売されています。シカ肉・イノシシ肉のメリットや注意点、他の肉類との違いを見てみましょう。

犬にとってのシカ肉・イノシシ肉の違いやメリットとは?

代表的な違いとしては高タンパク・低脂肪という点があげられます。牛肉や豚肉などは程よく脂が入ることで、美味しく感じる利点もありますが量が多くなると肥満に繋がってしまいます。えごまオイルなどをかける場合は脂質が多くなりやすいといえます。シカ肉はささみと同じ量のタンパク質ですが、脂質は鶏もも肉よりも低い量です。不足しがちな鉄分や亜鉛も含まれていることが特徴です。イノシシ肉は脂質が多いですが、鉄分や亜鉛、ビタミンDなどが豊富に含まれています。
ペットフードのタンパク質源として勧められる理由としては、シカ肉のように高タンパク・低脂質でヘルシーである点や、食物アレルギー対策として使われる点などが大きいようです。

シカ肉とイノシシ肉を与える際の注意点とは?

厚生労働省の注意喚起もある通り、シカやイノシシなど野生動物の生食はE型肝炎ウイルスなどの危険性が伴います。手作りごはんなどで犬が食べる際にも同様のことが言えますので、肉の中心まで加熱しましょう。一部のジビエ肉を扱う事業者のホームページでは生食を推奨しているところも見受けられますが、感染症や食中毒の危険性が高いので他の肉類同様に、きちんと加熱調理をすることをおすすめします。

犬の食事においてシカ肉とイノシシ肉の主な栄養素と働き

ジビエには鉄や亜鉛などのミネラルのほか、ビタミン類も含まれています。シカ肉とイノシシ肉の場合、脂質が大きく変わるので、体型や他のトッピングとの組み合わせも考えて選ぶと良いでしょう。

タンパク質

タンパク質は20種類のアミノ酸が繋がって構成されたもので、筋肉や臓器、皮膚、被毛などをつくる生命活動には欠かせない栄養素です。大豆などの豆類にも含まれていますが、植物性タンパク質は必須アミノ酸が足りないこともあり、動物性タンパク質とともに摂取する方がバランスの良いタンパク源になります。特にシカ肉は高タンパクなので、嗜好性も高く筋肉をつけたい場合などには適していると言えます。

全身に酸素を運ぶ役割をし、不足すると貧血や疲れやすくなったりしてしまいます。手作りごはんでは不足しやすい栄養素のひとつでもあります。シカ・イノシシともに多く含まれているので、鉄の補給としても有用です。身近なところでは牛肉に多く含まれていますが、脂質を抑えたい場合はシカ肉が向いているでしょう。

亜鉛

健康的な皮膚や被毛、生殖機能などに関わっており、手作りごはんでは、AAFCO2016の養分基準に対して必ずと言って良いほど不足する栄養素です。シカ肉やイノシシ肉を使ったレシピだからといって必ず足りるわけではないですが、亜鉛の補給源として有用な食材です。
※AAFCO:米国飼料検査官協会の略で、栄養基準や表示に関する基準などを決めているアメリカの団体です。日本でも総合栄養食の基準となっています。

リボフラビン(ビタミンB2)

動物性の食材に多く含まれる栄養素で、健康的な皮膚や被毛に影響します。通常の食事からの摂取程度では過剰になることは考えにくく、水溶性のビタミンであることから積極的に摂りたい栄養素です。他の食材では卵やレバーなどにも多く含まれています。

栄養素単位にほんじか 赤肉 生いのしし 脂身付き 生和牛 もも 皮下脂肪なし 生豚 もも 皮下脂肪なし 生若鶏 もも 皮なし 生若鶏 ささみ 生
粗タンパク質g23.90018.80020.20021.50019.00023.900
粗脂肪g4.00019.80015.5006.0005.0000.800
リノール酸g0.2202.3000.3500.5600.5200.075
カルシウムg0.0040.0040.0040.0040.0050.004
リンg0.2300.1700.1700.2100.1900.240
カリウムg0.3900.2700.3300.3600.3200.410
ナトリウムg0.0550.0450.0470.0490.0690.040
マグネシウムg0.0270.0200.0230.0250.0240.032
mg3.9002.5002.7000.7000.6000.300
mg0.1500.1200.0800.0800.0400.030
マンガンmg0.0200.0100.0100.0100.0100.010
亜鉛mg2.9003.2004.3002.1001.8000.600
ヨウ素mg0.0010.0000.0010.0000.0000.000
セレンmg0.0070.0110.0140.0230.0190.022
ビタミンAIU13.33313.3330.00010.00053.33316.667
ビタミンDIU0.00016.0000.0004.0008.0000.000
ビタミンEIU1.1920.7450.2980.4470.8941.043
チアミンmg0.2000.2400.0900.9400.1200.090
リボフラビンmg0.3500.2900.2100.2200.1900.110
パントテン酸mg0.7601.0201.1400.8701.0602.070
ナイアシンmg6.9005.2005.9006.5005.50012.000
ピリドキシンmg0.60.350.360.320.310.62
葉酸mg0.0040.0010.0090.0020.0100.015
ビタミンB12mg0.0010.0020.0010.0000.0000.000

まとめ

野生動物による被害が大きいことから、ジビエの消費が推進されています。とくにシカ肉は他の肉類とは異なる高タンパク・低脂質という特徴があることから、今後もペットフードやおもちゃなどの商品が増えていくでしょう。犬の手作りごはんに取り入れたい場合は、インターネットでの通販が主流ですが、他の肉類同様にきちんと加熱して安全に使用するようにしましょう。

参考
文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
農林水産省 ジビエペットフードをめぐる情勢(令和元年10月21日(月)ジビエペットフードシンポジウムの発表資料)
環境省 いま、獲らなければならない理由 -共に生きるために-
農林水産省 捕獲鳥獣のジビエ利用を巡る最近の状況(令和5年5月版)
厚生労働省 ジビエ(野生鳥獣の肉)の衛生管理
生肉ジビエ料理の危険性 渡辺隆之 ペット栄養学会誌,18(2):121-125,2015

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