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生肉は犬のために良いのか?栄養価とリスクからデメリットとメリットを解説

Instagramで手作り犬ごはんのレシピや犬の健康に関する情報を発信しているリーリャ編集部(@lilya_foods)と申します。手作り犬ごはんの基本については手作り犬ごはんの作り方・レシピや注意点(量や食材、味付けなど)を解説で詳しく説明しています。 今回は、インターネットやSNSでもよく見かける、生食(生肉食)を食事に取り入れることについて解説します。

犬の本来の食事に近いとして生肉を食べさせる「生食」をしている方や、おすすめしている業者をよく見かけますが、本当のところはどうなのでしょうか。この記事では「興味はあるけどどう取り入れたら良いのかわからない」「そもそも生肉って食べても大丈夫なの?」などの疑問を解説していきます。生食の危険性を理解し、正しい安全なごはんを食べさせてあげられるよう参考にしていただけたらと思います。

犬に生肉を与えるメリットは本当にあるか?

生肉には栄養がたくさん含まれている?

生肉の利点のひとつはその豊富な栄養価にあると言われています。生肉は一般に、犬に必要なたんぱく質を豊富に含んでおり、特に牛肉や鶏肉には良質なアミノ酸が含まれています。犬の健康な筋肉の維持と成長など生命活動に必要不可欠なものです。
さらに、加熱した肉にも同様のことが言えますが、肉には犬の健康に重要なビタミンやミネラルも含まれています。特に、ビタミンB群、ビタミンA、ビタミンD、亜鉛、鉄などが挙げられます。これらの栄養素は犬のエネルギー生産、視力、皮膚と被毛の健康、神経系の機能、そして血液の形成に対して大きな役割を果たします。
しかし、生肉だけを与えていれば十分だと考えている方は気を付けてください。生肉だけでは特定の栄養素が不足する可能性があります。
カルシウムは通常、生肉には不足しているので、卵殻パウダーやサプリメントなど、他の食材と一緒に与えることでバランスをとる必要があります。他にも、ビタミンEやマグネシウムなどの栄養素が不足しがちになります。

生肉と調理済みの栄養価比較

下記はそれぞれの肉を、生と焼き調理した後の成分値を比較した表です。意外にも焼き調理後の方が増えた数値がたくさんあります。加熱により水分が抜け、濃縮されたことで成分値が増えたという見方もできますが、大幅な数値の減少は見られません。栄養価の減少というデメリットがないのであれば、特別な知識や経験がない限り、安全性の観点から加熱調理を選択することをお勧めします。
表中の栄養素は総合栄養食で必須とされるものです。

栄養素単位鶏むね肉 皮なし(生)鶏むね肉 皮なし(焼き)豚もも肉 皮下脂肪なし(生)豚もも肉 皮下脂肪なし(焼き)牛もも肉 皮下脂肪なし(生)牛もも肉 皮下脂肪なし(焼き)
水分g74.657.671.260.463.449.5
粗タンパク質g23.30038.80021.50030.20020.20027.700
アルギニンg1.5002.6001.4002.1001.3001.800
ヒスチジンg1.2001.9000.9101.2000.8401.000
イソロイシンg1.1001.8000.9801.5000.9601.300
ロイシンg1.8003.1001.7002.6001.7002.300
リジンg2.0003.5001.9002.8001.8002.500
メチオニンg0.6301.1000.6000.8400.5500.730
メチオニン+シスチンg0.8901.5500.8601.2100.7801.040
フェニルアラニンg0.8901.6000.8501.3000.8401.200
フェニルアラニン+チロシンg1.6903.0001.6202.5001.5802.200
トレオニンg1.1001.9001.0001.6001.0001.400
トリプトファンg0.2900.4900.2700.4000.2500.340
バリンg1.1001.9001.1001.6001.0001.400
粗脂肪g1.9003.3006.0007.60015.50022.700
リノール酸g0.2700.4600.5600.6600.3500.540
カルシウムg0.0040.0070.0040.0050.0040.005
リンg0.2200.3400.2100.2700.1700.190
カリウムg0.3700.5700.3600.4500.3300.350
ナトリウムg0.0450.0730.0490.0580.0470.050
塩素g0.0000.0000.0000.0000.0000.000
マグネシウムg0.0290.0470.0250.0330.0230.025
mg0.3000.5000.7001.0002.7003.800
mg0.0200.0400.0800.1100.0800.100
マンガンmg0.0200.0100.0100.0200.0100.000
亜鉛mg0.7001.1002.1003.1004.3006.300
ヨウ素mg0.0000.0000.0000.0000.0010.000
セレンmg0.0170.0290.0230.0310.0140.019
ビタミンAIU30.00046.66710.0003.3330.0000.000
ビタミンDIU4.0004.0004.0004.0000.0000.000
ビタミンEIU0.4470.7450.4470.0000.2980.596
チアミンmg0.1000.1400.9401.1900.0900.090
リボフラビンmg0.1100.1800.2200.2800.2100.240
パントテン酸mg1.9202.5800.8701.0701.1401.180
ナイアシンmg12.00018.0006.5009.4005.9006.600
ピリドキシンmg0.640.660.320.430.360.35
葉酸mg0.0130.0180.0020.0010.0090.007
ビタミンB12mg0.0000.0000.0000.0010.0010.002
コリンmg0.0000.0000.0000.0000.0000.000

生肉は酵素がたくさん含まれている?

生肉には、消化を助ける酵素が含まれています。酵素とは、生命体の生体反応を助けるために必要なタンパク質の一種で、食物の消化や栄養素の吸収に重要な役割を果たします。生肉を食べることにより、これらの酵素が犬の消化システムに直接供給され、消化の助けとなると考えられています。
特に、プロテアーゼとリパーゼといった酵素が含まれています。プロテアーゼは、タンパク質の消化を助け、リパーゼは脂肪の分解を助けます。これらの酵素は、犬の消化システムをサポートし、効率的な栄養素の吸収を可能にするとされています。
しかし、重要なことは、これらの酵素が犬の消化に有効に機能するためには、生肉が適切な温度で保存され、新鮮な状態で与えられることが必要であるという点です。もし生肉が適切な温度で保存されずに酵素が不活性化したり、肉が古くなると酵素の活性が低下する可能性があります。
さらに、犬自身も食事から摂取した栄養素を消化・吸収するための酵素を体内で生成しています。そのため、生肉から酵素を摂取することが必ずしも犬の健康に直接的な利益をもたらすわけではないという意見も一部にはあります。
生肉に含まれる酵素が犬にとって有益かどうかは、現在のところ科学的な根拠はないだけでなく、寄生虫や細菌感染の危険性がはらみます。不明確な情報を取り入れるよりも、安全な食事を作ってあげるほうが健康な生活を送ることができるのではないでしょうか。

犬に生肉を食べさせるデメリット

寄生虫・細菌・ウイルスに感染する

寄生虫

生肉、特に豚肉や魚肉を食べることで、犬はトキソプラズマやエキノコックスなどの寄生虫に感染する可能性があります。これらの寄生虫は犬の内臓に寄生し、消化不良、嘔吐、下痢などの症状を引き起こします。

細菌

生肉はサルモネラや大腸菌、ブドウ球菌などの細菌を保持している可能性があります。これらの細菌は嘔吐、下痢、発熱などの症状を見せます。場合によっては、細菌感染は生命に影響を及ぼす可能性もあります。

ウイルス

特に鶏肉にはカンピロバクターという細菌が存在する可能性があり、これが原因で食中毒を引き起こすことがあります。症状としては、下痢、嘔吐、腹痛が主です。
以上のように、犬が生肉を食べることは様々な寄生虫、細菌、ウイルスへの感染リスクを伴います。それぞれの感染症は症状が類似しているため、具体的な診断は獣医師による検査が必要です。感染が疑われる場合、または犬の体調が急激に悪化した場合はすぐに獣医師に連絡しましょう。

犬・猫への肉の正しい与え方

十分に加熱する

肉を与える際の最も重要なルールは、十分に加熱することです。肉を加熱することで寄生虫、細菌、ウイルスを死滅させ、感染リスクを最小限に抑えることができます。肉は内部までしっかりと火を通し、特に鶏肉や豚肉は十分に加熱することが重要です。具体的には、肉の中心温度が75度で1分以上加熱することで病原体が死滅します。スーパーで売られている肉は、加熱調理をすることを前提に売られていますので生であげることはやめましょう。

適切な肉の選択

一部の肉は、特定の寄生虫や細菌に感染しているリスクが高いです。例えば、豚肉はトキソプラズマ、魚肉はアニサキスといった寄生虫を保持している可能性があります。そのため、加熱する前に肉の種類を適切に選ぶことも重要です。

調理器具の清潔さを保つ

生肉を取り扱った調理器具は、他の食材に触れないようにすぐに洗うことが重要です。また、調理器具を洗った後は十分に乾燥させ、細菌の繁殖を防ぎましょう。殺菌の際は、煮沸消毒や次亜塩素酸ナトリウムも有効です。身近に手に入るものだと、「キッチンハイター」を薄めると次亜塩素酸ナトリウム液を作ることができます。殺菌に効果的ですが、肌や目に触れると危険ですので十分注意して取り扱いましょう。

食事の管理

肉に限らず犬に食事を与えた後は、残ってしまった食べ物はすぐに片付けましょう。手作りごはんやウェットフードなどの水分量の多いものは、細菌が繁殖しやすい環境になっています。同じように飲み水もなるべくこまめに交換した方が安全です。
これらの注意点を守り、安全に肉を調理して与えることで、犬は肉から得られる多くの栄養を享受でき、健康を維持する手助けとなるでしょう。

まとめ

生肉を与える考えはアメリカなどでもあり、日本でもその考えを取り入れている場合があります。今のところ、科学的に生食が良いとされる根拠はないだけでなく、寄生虫などの危険性の方が多く注意喚起されています。また、共通感染症と言って人にもうつる感染症もありますので、飼い主・動物病院・トリミングサロンなどの施設にも危険にさらしてしまいます。生肉で体調が良くなったという記事も散見されますが、その効果が全ての犬に当てはまるわけではありません。まずは安全な食事を心がけることが大切です。

参考
政府広報 ご注意ください!お肉の生食・加熱不足による食中毒
花王 キッチンハイターでウイルス除去!
生肉ジビエ料理の危険性
ペットにおける畜肉の生食の危険性について
日本食品標準成分表(八訂)

lilya編集部
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