Instagramで手作り犬ごはんのレシピや犬の健康に関する情報を発信しているリーリャ編集部(@lilya_foods)と申します。今回は、犬の関節に関する病気について解説しています。
犬も人と同じように年齢を重ねると関節に様々なトラブルがおこるようになります。実際、成犬(1歳以上)の20%以上が関節に関する疾患を抱えています。関節の疾患は慢性的な痛みや運動機能の低下を招くため、飼い主が早めに異変に気づいて対処することが重要です。
この記事では、犬の関節に関する病気について解説しつつ、飼い主ができる予防やサプリメントについて説明しています。
犬の関節疾患で見られる主な症状
関節に問題が生じると、犬の動作や様子に少しずつ変化が現れます。痛みのため活動量が減り、関節をかばうようなしぐさが増えるのが特徴です。具体的には、歩き方がぎこちなくなったり足を引きずるようになるほか、立ち上がりや起き上がる動作に時間がかかるようになります。こうした変化は「年を取っておとなしくなっただけ」と見過ごされがちですが、その陰に関節炎などの疾患が隠れている場合もあります。また関節周囲に腫れや熱感が生じ、ひどい場合は関節が目に見えて腫れることもあります。
要注意の具体的な症状サイン
このような兆候が見られるようになったら関節に関するトラブルが発生しているかもしれません。
- 散歩に行きたがらない
- 段差や階段の上り下りを嫌がる
- 以前のように走らなくなったり、遊ばなくなる
- 立ち上がるのに時間がかかる、動作がゆっくりになる
- 元気がなく、尻尾を下げていることが多い
- 足を引きずったり、片足を上げて歩く
- 散歩中に途中で座り込んでしまう
- 関節を触られるのを嫌がったり、痛む個所をしきりになめる
- 痛みのあまり鳴く、触ろうとすると唸ったりする
これらの症状が見られたら、単なる加齢のせいと決めつけず、一度動物病院で診察を受けることをおすすめします。特に複数のサインが重なる場合、関節に何らかの不調(関節炎や関節疾患)が進行している可能性があります。
関節疾患の種類と原因
変形性関節症(骨関節症、関節炎)
加齢などによる関節軟骨の摩耗・変性によって関節が炎症を起こし、痛みや腫れ、関節の変形をきたす進行性の疾患で、一度発症すると完治せず慢性化します。長年の負荷蓄積や老化、肥満、他の疾患に起因する原因などにより発症し、中〜高齢の大型犬で特に発生が多い傾向があります。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝のお皿(膝蓋骨)が正常な位置から外れてしまう疾患です。先天的な要因が多く、小型犬が発症しやすい傾向にあります。膝関節が外れることで跛行や痛みを生じ、脱臼と整復(元に戻ること)を繰り返すうちに関節炎が進行することもあります。外傷や激しい運動によって後天的に生じる場合もあります。
股関節形成不全
股関節がゆるく不安定で、正常に形成されない先天疾患です。主に大型以上の犬種が発症しやすいですが、小型犬種でも見られます。大きく分けると股関節に緩みが生じる若年期に発生しやすいタイプと関節構造の形成異常が認められる中高齢期に発症するタイプに分かれます。
他にもいくつか関節の病気はありますが、上で挙げた病気ほど発症率は多くなく一般的には関節トラブルの多くが上記で挙げた病気が原因となります。
主な治療法
犬の関節疾患は根本的な完治が難しいため、治療の目的は痛みを和らげつつ関節の機能を維持し、進行を遅らせることになります。症状や疾患の程度に応じて、以下のような治療法が組み合わせて行われます。
内科的治療(薬物・保存療法)
痛みや炎症を抑える薬の投与が基本です。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの消炎鎮痛剤の内服や、必要に応じて関節内注射などで痛みをコントロールします。また、関節保護のサプリメント(グルコサミンやコンドロイチン硫酸など)や関節ケア用の処方食を用いて軟骨のケアを行い、関節痛の軽減に努めます。肥満がある場合は減量も並行して行います。
外科的治療(手術療法)
内科的アプローチで痛みが十分に取れない重度のケースや、関節の構造的な問題が原因の場合には外科手術が検討されます。例えば、膝蓋骨脱臼や股関節形成不全では骨の整復・固定や形成術、前十字靭帯断裂では再建術など、状態に応じた手術で関節の安定化を図ります。変形が重度な関節には関節を固定する手術や人工関節の挿入が行われることもあります。手術は犬の体への負担も大きいため、実施の際は獣医師と十分に相談して決定します。
理学療法・リハビリ
痛みの範囲で適度に体を動かすリハビリテーションは関節機能の維持に効果的です。関節炎では痛みから動かなくなることで筋肉や靱帯が萎縮し、関節のクッション機能も低下してさらに悪化を招きます。そのため、運動療法(散歩やストレッチ、水中トレッドミルなどのリハビリ運動)によって筋力低下を防ぎ、関節を支える筋肉を維持します。以前は「安静にさせる」ことが重視されていましたが、最近では痛みを薬でコントロールしつつ適度に動かす方針が推奨されています。併せて、家庭では生活環境の改善も重要です。フローリングに滑り止めマットを敷く、段差にスロープを設置するなどして関節への負担を減らし、自力で動きやすい環境を整えます。
これらの治療は一度きりではなく、長期的なケアとして継続することが大切です。定期的に獣医師の診察を受け、痛みの度合いや進行状況に応じて治療内容を調整していきます。
家庭でできる関節の日常ケア
適正体重の維持(肥満予防)
肥満は関節への最大の敵です。体重が増えるとそれだけ関節にかかる負荷が増し、関節炎の進行リスクも高まります。
滑りにくい生活環境
床で滑ると関節に負担がかかりケガの元になります。室内ではフローリングに滑り止めマットを敷くなどして足腰への衝撃を和らげましょう。特に足腰の弱ったシニア犬には、立ち上がりやすいように床に敷物を敷いたり、ソファや車へ上がる際には踏み台やスロープを使用すると安全です。また、肉球の周りの毛をこまめにカットし爪を適切に整えることで地面を踏ん張りやすくなり滑り止めに役立ちます。
適度な運動を続ける
運動不足も関節には良くありません。無理のない範囲で定期的に適度な運動をさせ、筋肉や靱帯を維持しましょう。軽い散歩や室内での遊びでも継続することが大切です。関節を動かすことで軟骨へ栄養が行き渡り、筋力が落ちるのを防ぐ効果があります。逆に動かさないと関節周囲の筋肉が衰え関節が不安定になるため、痛みがない範囲で体を動かすよう促してあげてください。
過度な負担を避ける
若いころは平気でもシニア犬になると激しい運動や高すぎる段差の上り下り、急な方向転換、ジャンプを繰り返す遊びなどは負担が大きく、関節を痛める場合があります。特に関節疾患の素因がある犬種では、成犬になるまで過度な運動をさせないことも将来的な予防につながります。
身体を冷やさない
関節は冷えによってこわばり痛みが増すことがあります。冬場や寒い日の散歩では犬用のコートを着せる、室内でも寝床に厚手のマットやブランケットを敷くなどして関節を冷やさない工夫をしましょう。
栄養管理とサプリメントの活用
関節の健康維持には日頃の食事も重要です。高品質なたんぱく質は筋肉を維持するのに不可欠なので十分に摂取させます。総合栄養食をきちんと食べていればたんぱく質や関節に良いとされるビタミンE・C・Dは十分に摂取することはできますが、オメガ3脂肪酸(EPA/DHA)やコンドロイチン、グルコサミンなどは意識して摂取する必要があります。
関節ケアに効果的な栄養素・サプリメント
関節ケアに有効な栄養素は主に軟骨成分の補給・抗炎症作用・止痛に分類することができます。近年、種類が増えている犬用関節ケアサプリメントもこれらの効能のある成分を組み合わせて作られています。以下でご紹介する栄養素で分類すると、グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲンは軟骨成分の補給、オメガ3脂肪酸(EPA/DHA)は抗炎症作用、MSMは止痛に効果があります。
グルコサミン
関節軟骨の構成成分であるアミノ糖の一種です。関節の軟骨の成長や修復に必要不可欠な成分で、不足を補うことで軟骨のすり減りを抑制します。コンドロイチンと併用することで関節炎に対する有効性が期待でき、相乗効果を発揮します
コンドロイチン
コンドロイチンも関節軟骨の主成分のひとつです。軟骨の弾力を保ち関節の動きを滑らかにする働きがあります。股関節や肘関節に関節炎を持つ犬に長期投与すると、痛みを緩和する効果が期待できます。
コラーゲン
コラーゲンは軟骨を構成するたんぱく質の一種で、関節の柔軟性に寄与します。関節炎のある犬にコラーゲンペプチドを長期投与すると、疼痛を緩和する効果が期待できます。
オメガ3脂肪酸(EPA/DHA)
魚油などに含まれる不飽和脂肪酸で、抗炎症作用に優れているため関節の炎症を抑制する効果が期待できます。
MSM
コラーゲンの生成を促進し、関節の柔軟性を高めることで、関節炎の痛みを和らげます。
上記以外にも、ヒアルロン酸やエラスチン、抗酸化作用のあるビタミンC・E、関節軟骨の生成を助けるビタミンDなど様々な成分が関節サポート目的で配合されています。近年では、オメガ3 脂肪酸、コンドロイチン、ビタミンC・Eなどが豊富に含まれているミドリイガイ(緑イ貝・モエギイガイ・GLM)が注目されています。

まとめ
犬の関節炎は早期発見と適切なケアで進行を遅らせることができます。愛犬が快適に過ごせるよう、適切な運動、食事管理、ケアを心がけましょう。また、気になる症状が見られた場合は、早めに獣医師に相談することが大切です。