Instagramで手作り犬ごはんのレシピや犬の健康に関する情報を発信しているリーリャ編集部(@lilya_foods)と申します。手作り犬ごはんの基本については手作り犬ごはんの作り方・レシピや注意点(量や食材、味付けなど)を解説で詳しく説明しています。
今回は、犬が一日で必要とするカロリー(エネルギー)や栄養素の計算方法について解説します。また、犬が1日に必要な栄養(カロリー、栄養素)シミュレーターという記事では体重とライフステージを入力するだけで簡単に計算できるようにしてありますので、こちらもぜひご覧ください。
この記事は犬ごはんを与えるときに必要なカロリーや栄養素の目安を知りたい人むけに作成しています。記事の前半にカロリーの計算方法を説明し、後半で各種栄養素の計算方法を解説しています。必要なカロリーや栄養素は生活範囲の広さや運動量の多寡で大きく変わってくるのであくまでも参考程度とし、体型を見て調節してください。
犬が一日で必要とするカロリー(エネルギー)の計算方法
参考文献:(7)犬・猫のエネルギー要求量(ペット栄養学会誌/4 巻 (2001) 2 号)
犬が必要とするカロリーは以下のような流れで計算します。
- 現在の体重から安静時エネルギー要求量(RER)を計算する
- ライフステージ別の係数を使って1日あたりのエネルギー要求量(DER)を計算する
現在の体重から安静時エネルギー要求量(RER)を計算する
安静時エネルギー要求量(RER)というと少し分かりにくいかもしれませんが、要は「適温で安静にしている状態で消費するエネルギー」です。いくつか計算方法がありますが、ここでは分かりやすさを重視して、簡単な式を用います。
安静時エネルギー要求量(RER)は以下の式で計算できます。
安静時エネルギー要求量(RER)=体重0.75×70
電卓で計算する際は以下の通りに操作すると計算することが可能です。
- 体重を3乗する(4kgの場合、4×4×4=64)
- ルート(√)を2回押します。(4kgの場合、2.8284…となります)
- 70をかけます。(4kgの場合、2.8284…×70=197.9898…となります)
- 4kgの場合、約198kcalが安静時エネルギー要求量(RER)となります
ライフステージ別の係数を使って1日あたりのエネルギー要求量(DER)を計算する
最後に安静時エネルギー要求量(RER)にライフステージ別の係数をかけることで1日に犬が必要とするカロリー(1日あたりのエネルギー要求量)を計算することができます。
ライフステージ | ライフステージ係数 |
離乳から4ヶ月齢 | 3 |
4ヶ月齢から成犬の体型まで | 2 |
避妊・去勢済みの成犬 | 1.6 |
非避妊・非去勢の成犬 | 1.8 |
肥満傾向の成犬 | 1.4 |
妊娠時の最後の21日 | 3 (はじめの42日は通常と同じ) |
授乳 | 4~8(子犬の数による) |
活動量が活発であったりそり曳きなどの重労働を行う場合は係数が2~4.8になったり、高齢になるとライフステージ係数を少なくしたりします。
4kgの去勢済み成犬の場合、以下の式で計算することができ、316.8kcalが1日に必要とするカロリーとなります。ただし、これはあくまでも給餌量の目安の出発点なので体重の増減などを見つつ調整してください。
1日あたりのエネルギー要求量=198kcal(RER)×1.6=316.8kcal
犬が一日で必要とする栄養素の計算方法
参考文献:イヌの維持期のAAFCO養分基準(2016)を満たす手作り食レシピの設計法
栄養素の計算にはAAFCO養分基準(2016)を使用します。AAFCOとは米国飼料検査官協会のことで、日本国内ではこの基準準拠したドッグフードのみが総合栄養食を名乗ることができます。AAFCO養分基準には代謝エネルギー1000kcalあたりの最小値と最大値があり、最小値は最低限満たすべき量となっており、最大値は超えてはいけない分量となります。
以下の表は犬の維持期における栄養基準となっています。(代謝エネルギー1000kcalあたり)
※NCRは米国国立研究評議会のことでAAFCOでは定められていない上限値の情報を備考として記載しています。
栄養素 | 単位 | 最小値 | 最大値 | 備考 |
粗タンパク質 | g | 45.0 | – | |
アルギニン | g | 1.28 | – | |
ヒスチジン | g | 0.48 | – | |
イソロイシン | g | 0.95 | – | |
ロイシン | g | 1.70 | – | |
リジン | g | 1.58 | – | |
メチオニン | g | 0.83 | – | |
メチオニン+シスチン | g | 1.63 | – | |
フェニルアラニン | g | 1.13 | – | |
フェニルアラニン+チロシン | g | 1.85 | – | |
トレオニン | g | 1.20 | – | |
トリプトファン | g | 0.40 | – | |
バリン | g | 1.23 | – | |
粗脂肪 | g | 13.8 | – | NRC(2006)の上限量では82.5 |
リノール酸 | g | 2.8 | – | NRC(2006)の上限量では16.3 |
カルシウム | g | 1.25 | 6.25 | |
リン | g | 1.00 | 4.0 | |
カルシウム:リン比 | 1:1 | 2:1 | ||
カリウム | g | 1.5 | – | |
ナトリウム | g | 0.20 | – | NRC(2006)の上限量では3.75 |
塩素 | g | 0.30 | – | NRC(2006)の上限量では5.875 |
マグネシウム | g | 0.15 | – | |
鉄 | mg | 10 | – | |
銅 | mg | 1.83 | – | |
マンガン | mg | 1.25 | – | |
亜鉛 | mg | 20 | – | |
ヨウ素 | mg | 0.25 | 2.75 | |
セレン | mg | 0.08 | 0.5 | |
ビタミンA | IU | 1250 | 62500 | |
ビタミンD | IU | 125 | 750 | |
ビタミンE | IU | 12.5 | – | |
チアミン | mg | 0.56 | – | |
リボフラビン | mg | 1.3 | – | |
パントテン酸 | mg | 3.0 | – | |
ナイアシン | mg | 3.4 | – | |
ピリドキシン | mg | 0.38 | – | |
葉酸 | mg | 0.054 | – | |
ビタミンB12 | mg | 0.007 | – | |
コリン | mg | 340 | – |
例えば4kgの去勢済み成犬の場合、1日あたりのエネルギー要求量は316.8kcalなので粗タンパク質の必要量は、以下の計算式で求めることができ、14.256g必要となります。
316.8kcal÷1000kcal×45g=14.256g
日本食品標準成分表を使用する場合の注意点
手作り食を作る際に、各食品にどれくらい栄養素が含まれているか調べる時は日本食品標準成分表を使用すると便利ですが、こちらは人用なので犬用としてそのまま使うことはできません。以下のような変換が必要となります。
AAFCO養分基準の栄養素(単位) | 日本食品標準成分表の値から返還する場合 |
代謝エネルギー(kcal) | 粗タンパク質×3.5、粗脂肪×8.5、NFE(炭水化物-食物繊維総量)×3.5の総和 |
各アミノ酸(g) | 単位がmgなので0.001倍にする |
リノール酸(g) | 単位がmgなので0.001倍にする |
カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、マグネシウム(g) | 単位がmgなので0.001倍にする |
ビタミンA(IU) | 10÷3×レチノール(μg) |
ビタミンD(IU) | 40×動物性ビタミンD(μg) |
ビタミンE(IU) | 1.49×α-トコフェロール(mg) |
チアミン(mg) | 0.8チアミン塩酸塩(mg) |
ナイアシン(mg) | ニコチン酸相当量(mg) |
ビタミンB12(mg) | 0.001×シアノコバラミン相当量(μg) |
またコリンは日本食品標準成分表に載っていないのでアメリカ農務省(USDA)の食品データベースなどで調べる必要があります。コリンに関する解説やコリンを多く含む食材の紹介はこちらの記事で行っています。